STEP4 – パートナーストレッチの具体的な技術

ストレッチトレーナーになるためのSTEP7

前章まででストレッチの効果はご理解いただけたかと思います。

いよいよ今回は、そのストレッチの効果を最大限に引き出すための「パートナーストレッチ」の技術について掘り下げます。

「マイナスを0に」そして「0をプラスに」

パートナーストレッチは単に筋肉を伸ばすこと以上のものであり、クライアントのニーズや状態に合わせオーダーメイドで技術を組み合わせます。

クライアントのニーズは大きく2つに分けられます。

1つ目のニーズ「マイナスを0に」

例えば、怪我や故障などに伴う可動域制限を改善することで、本来クライアントの身体が持ち得る状態へリセット、つまり”マイナス状態を0に戻してあげる”ことです。

具体的な例としては、骨折により筋肉の柔軟性が低下した状態のリセット、腰痛に伴う姿勢不良の改善(※逆に、姿勢不良に伴う腰痛、となっているケースも往々にしてあり)など。

2つ目のニーズ「0をプラスに」

1つ目で本来の可動域や柔軟性を取り戻したクライアントの身体を、更に効率良く動ける状態へ持っていくことです。

例えば、今までできなかった動きができるようになること(前屈で地面にタッチ、Y字バランス、等)やスポーツパフォーマンス向上など。

つまり”0から今よりも高みへと昇華してあげる”ことが該当します。

これが、パートナーストレッチは老若男女、一般の方かアスリートかさえも問わず、どんな方にでも有益な効果をもたらす技術と言える所以です。

主訴と改善アプローチ例

上記で述べた通り、パートナーストレッチにはクライアントの要望に応じオーダーメイドで改善プランを構築することができます。

なかなか技術の話に入らず申し訳ありません。

しかし、どんな方にでも当てはまる技術は無いのです。
大切なのは、まずはそのクライアントの求めているものを明確にすること。

そこさえクリアにできれば、ストレッチの効果は指数関数的に高まると言っても過言ではありません。
ここでは、具体的に主訴に応じたアプローチ例を挙げ、より明確なイメージへと繋げていきましょう。

【以下アプローチ例の見方】

・主訴
 ①姿勢の傾向
 ②収縮位にある筋肉
 ③アドバイス方針

【主訴に応じたアプローチ例】

・腰痛(猫背)※仙腸部
 ①骨盤の後傾、巻き肩、頭部の前方突出
 ②大臀筋、ハムストリングス、下腿三頭筋、上腕二頭筋、大胸筋、胸鎖乳突筋
 ③下半身後面と上半身前面へのセルフストレッチ、姿勢では骨盤の前傾を意識

・腰痛(反り腰)※腰背部
 ①骨盤の前傾、反り腰、つま先重心
 ②大腿四頭筋、腹斜筋、肩甲骨はがし、腰方形筋、小円筋、上腕三頭筋
 ③下半身前面と上半身後面へのセルフストレッチ、姿勢では骨盤の後傾を意識

・肩コリ
 ①巻き肩、頭部の前方突出、なで肩
 ②上腕二頭筋、三角筋、小円筋、肩甲骨はがし、大胸筋、胸鎖乳突筋
 ③上背部屈筋群へのセルフストレッチ、姿勢では頭部を体軸の真上に位置する意識

・首コリ
 ①反り腰、つま先重心、いかり肩(力み)
 ②前鋸筋、肩甲骨はがし、頭板状筋、胸鎖乳突筋、斜角筋、頸部ダイレクトストレッチ
 ③頸部へのセルフストレッチ、姿勢では首肩の無意識の力みが入っていないか脱力チェック

もちろん、上記以外にも主訴やアプローチ方針は存在しますが、私の経験則から見て代表的なものはこの4項目です。

そして、例外はあるものの原則的として上記「②収縮位にある筋肉」に対し、積極的にストレッチをかけることがポイントです。
それは、「マイナスを0に」にとっても、「0をプラスに」 にとっても、双方にとって重要なこととなります。

主導筋と拮抗筋を見極める

いよいよ実際のストレッチ技術の話に入っていきます。

上記でクライアントの主訴を選別できたら、「主導筋」と「拮抗筋」に対しストレッチをかけていきます。

「主導筋」とは、ある動作を行う際に使う、つまり”収縮”する筋肉。
「拮抗筋」とは、その動作を行う際に反対の動き、つまり”伸長”する筋肉。

原則として、「主導筋」に対しては15秒以上のスタティックストレッチ(静的)ストレッチを。
「拮抗筋」に対しては、ダイナミックストレッチ(動的)もしくは6秒程度のスタティックストレッチを、行います。

例えば、「・腰痛(猫背)※仙腸部」という主訴であれば、②に記載の通り「大臀筋」が収縮位にある筋肉つまり主導筋の一つです。
そして、この際の拮抗筋は「腸腰筋」が挙げられます。(他にもあるが代表的なものに言及)

よって、
「大臀筋」に対し、15秒以上のキープを行うストレッチ
「腸腰筋」に対し、6秒程度のキープを行うストレッチ

を行うことで、骨盤の前後傾バランスが保たれやすくなるのです。

また、骨盤の後傾が過度であれば、クライアント自身で拮抗筋を発火していただく「PNFストレッチ」なども併用します。
これはダイナミックストレッチの一種です。

(実際の細かいやり方まで言及すると膨大な説明が必要となってしまうので、ここではあくまで使う技術の方向性や全体像を捉えていただくことに留めます。)

経過の共有

上記の通りストレッチを進めていく中で、セッション前後での身体や感覚の変化をクライアントと共有することに加え、数ヶ月単位での変化を共有していくことが重要です。

クライアントのニーズは、冒頭に述べた通り「マイナスを0に」と「0をプラスに」の、大きく2つのニーズに分けられます。

もちろんクライアントのニーズに応じ、ストレッチを行う筋肉の種類や範囲、強度は調整が必要となってきます。

どんな状況であっても共通して言えること、それは「常に経過を共有する」こと。
その目的は、「昨日の自分よりも一歩でも前に進んでいる」ことの確認です。

もし前回よりも状況が改善もしくは良い変化や兆しが見られないのであれば、前回のアプローチ方針には改善の余地があると言えます。

このように、常に自身が行うストレッチに対するクライアントの変化を把握することは、根本的な改善を実現するために非常に重要です。

まとめ

パートナーストレッチの目的は、「マイナスを0にする」ための課題改善と、「0をプラスにする」ための機能向上に分けられる。

クライアントの具体的なニーズと身体状況に基づき、定型化されたメニューではなく個別最適されたアプローチつまりオーダーメイドのストレッチ計画の策定が重要。

原則として、主導筋には静的ストレッチを、拮抗筋には動的または短時間の静的ストレッチを適用する。

ニーズを踏まえた改善と変化の実現のためには、クライアントとの経過共有、必要に応じたアプローチの調整が重要。

ここまでで技術に関する理解を深めていただけたかと思います。

次章からは、より実際のセッション(クライアントにストレッチを行う)に感覚を近付け、コミュニケーション力の重要性に関して考察していきます!